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創業者が語る、カルチャーメディア「Akato(アカトウ)」誕生の理由

2022年、インターネットの海の片隅で90年代をテーマにした異色のカルチャーメディア「Akato(アカトウ)」が産声をあげた。アカトウは、ラジオ、記事、そしてECサイトを併せ持つ複合メディアだ。立ち上げたのが和歌山県の秘境那智勝浦町で「cafe アマアイ」を営む鳥羽山恭兵氏だと聞くと、一気に疑問がいくつも湧き立ち上がる。なぜ、カフェのオーナーがカルチャーメディアを立ち上げたのか。どんなメディアにしていきたいのか。そもそも「アカトウ」とは何なのか――。cafeアマアイで、話を伺った。

話し手:鳥羽山恭兵
聞き手:池山草馬(株式会社ヒトノハ)

|「Akato(アカトウ)」とはなにか?|

――そもそも、このメディアを「Akato(アカトウ)」と名付けた理由を教えて下さい

鳥羽山 これはね、名前を決めるときに結構いろいろ考えたんです。アカトウは、僕の意見じゃなかったんですよ。たしか。僕はもっと、こじゃれたような名前をつけようとしていて。でもなんかしっくりこんな、と。何かないかなと思ってお客さんや友達に相談をして、その中で出てきたのかな。

勝浦に「アカトウ」っていうスポットがあって、スケボーとか釣りとかしていたんで。勝浦の人からすればアカトウっていえばわかるんですよ。馴染みのある場所なんで。だから、候補に入れたんですね。それで関係者で集まって候補を言っていく中で僕が「アカトウ」っていう単語を言って、じゃあ、それでいきましょうっていう流れになりました。

那智勝浦の知る人ぞ知るスポット「アカトウ」。「赤い灯台」を略してアカトウと呼ばれるようになった……と考えられる。この勝浦湾に突き出た堤防にある小さな灯台は、地元の人ならどの世代でもわかる勝浦を象徴する場所であり、鳥羽山さんにとって青春を語る上で外せない場所でもある。

――アカトウは、鳥羽山さんにとってはどういう場所なんですか?

鳥羽山 10代のときは、ほぼ毎日のように、スケボーをしに行った場所です。その前の小学生のころは釣りをしに行ったりもありますし。それ以外にもいろんなこと(笑)があった場所なんで。

――今の笑いに込められているものをもう少し教えて下さい。

鳥羽山 いろんなことがありましたよ。あそこ(※アカトウ)ね、いまは階段になってるんですけど、昔はすぽっと段差やったんですよ。あそこは昔から車中泊をする人が多かったんです。まあなにもないし、公衆トイレもあるしっていうので。それで、夜にスケボーしてたら、車が段差のところに来て、見えんかったみたいでどんって落ちて。車の前半分だけ落ちてて、僕らでそれを助けて、とか(笑)。怖い先輩がばーっときて「おいちょっと誰々の連絡先を教えてくれ」とかいって「なんかあったんすか」とか。

――なんだか、とりあえず感ありますね。とりあえず、あそこに集まるみたいな。

鳥羽山 そうそうそう。中2、中3のやつらが、とりあえず夜話をしに行くような場所なんです。

|地方×ストリート×おっさん|

――改めて、アカトウってどんなメディアなんですか?

鳥羽山 イメージとしては、地方のストリート感をメディアにできたらなと思うんですよ。しかもそれをおっさんがやってるっていう(笑)

――地方×ストリート×おっさん……ですか?

鳥羽山 そう。地方っていってもね、那智勝浦っていう半端ない地方なんで。やけど、ちょっとはこんなにイケてる人もおるし、イケてるスポットもあるよっていうのをね。たぶんこれがね、都会やと普通のことなんやけど、こんな田舎やからこそ価値があるんやないかなって。

取材に応える鳥羽山さん。那智勝浦町は、人口約1万4千人(2022年)。マグロと温泉、世界遺産で知られる和歌山県屈指の観光地だが、都市圏からは飛行機や特急を使っても3時間はかかる陸の孤島でもある。ストリートというと都会を想像しがちだが、日本全国の地方で育ったストリートカルチャーのファンたちは、どのように情報をディグリ、それらとどう響き合っていたのか。

――ラジオも数本収録していると聞いたのですが、今後はどんなゲストを呼んで話を聞いていく予定ですか?

鳥羽山 この地域にいる、同年代前後くらいの、面白い人。基本的には友達から攻めていってます。もう何人かには出てもらってるんですけど、オファーはまだ何人かにかけていて。まだまだ面白いやつはおるんですよ。

ラジオの方は、人を掘っていって、同年代トークとか。それに加えて、基本的には友達とか近い関係の人なんで、こんな尖った人が、こんな僻地におるんやでっていうのを発信していけたらいいなと思っています。


――とくにこんな人に届いてほしい、という狙いを教えて下さい。

鳥羽山 完全に同世代の、男。だから、40前後ですね。その人たちに懐かしいなと思ってもらうのが、メディア・コンテンツのメインです。基本的にはゲストの人の、10代、つまり90年代後半の話になってくるんですけど。

リスナーの人も共感することもあったり、地域でも違うこともあったりすると思うんで。そっちはそんな感じやったんや、うちのところはこんな感じやったって、思い出してもらったらええかなって思いますね。

|アカトウはどこへ行くのか?|

――アカトウの行く末、どうなっていきたいっていうのはありますか?

鳥羽山 行く末はね……やっぱり、外人さんにも、海外の方にもこの街を知ってもらいたいですね。せっかく熊野古道っていう、世界的にも注目されている場所で、人も増えてきていて。いまヨーロッパとか英語圏の人も戻ってきつつあるんで、この流れに乗って。熊野古道に行ったついでに、ここにも寄ってもらえるような場所になったら、もう最高ですね。

――もっと、この街(那智勝浦)に来てほしいっていうところなんですね。

鳥羽山 うちだけじゃなくて、この街で。その、いまはまだ飲食店しかないんで難しいんですけど、面白い店、新しいお店があるんで。それに加えて、昔ながらのお店もあるんで。いろいろ遊べると思うんですよ。

やっぱり活かしきれてないんやろな、っていうのは、僕にもどうしたらええんかわからんのですけど。観光資源はたくさんあるし、違うやりかたをすれば、もっとお客さん呼べるんやないんかなっていうのは、みんな思ってるんやとは思うんですけど。やり方がわからんだけで。


――ポッドキャストで好きな、パーソナリティの人の地元が気になって行ってしまう、みたいなルートもありますよね。

鳥羽山 ですね。力は弱いですけど、そういうの好きなんで。

(文:池山 構成:山口 編集:辻本 写真:丸山)

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